守りあえる、そんな関係でいたい



私の居場所はいつもあなたの隣だけど、大抵は半歩後ろ。
昔から、ずっとそうでした。

出会った頃の私はまだ本当に小さな子供でしたから、一緒に出掛ける時も、
どこかに出掛けるあなたに勝手に着いていく時も、上背のあるあなたを追い駆けるのが精一杯で。
あなたは足が早くて『韋駄天』と言われたりする位だから、
それでも私の為にゆっくり歩いていてくれたんだと思います。

ねぇ、そうでしょ?
私はそんなさりげない優しさに気付いて、大好きになって。
男らしさの漂う彼の背中に憧れて、少し後ろから見上げているのが好きでした。

江戸でお祭りに連れて行ってくれた時も、あなたに手を引かれて。
最初はどうして隣にいさせてくれないのかと不満を抱いていたけれど、
いつ頃からか、私の為に通り道を作ってくれてるって判ってからは、
その心遣いがこの上なく嬉しくて、少し照れ臭かったです。

京に来た今でも、共に戦いに挑むとなると、あなたは私を背中に隠そうとしますね。
できる限り人を斬らせまいとして、血を浴びさせまいとして、
とうに血に染まって殺人鬼となった私を、後ろに追いやろうとする。
あなたが私に出動を命じているのに…
その矛盾に一番苦しんでいるのは誰か分かっているから、いつも何も言えないのですが…

―でも、私はもう守られるだけの存在じゃありませんよ?

何度もそう告げましたよね。
京に上る時も、一緒に過ごしている時間にも、血を浴びた戦いの中でも。
それでも、あなたは私の気持ちを受け入れてくれないどころか、聞く耳持たず。

芹沢さんを斬った時につけられた顔の傷に触れる度、あなたは後悔に表情を曇らせますが、
あれは私の不覚の所為。避け切れなかった、私の所為。
力不足の私を罵る権利こそあれ、責任を感じる必要など無いのに。

―あなたの隣に並んで、あなたを守りたいのに。

―背中を預けられる、守りあえる存在になりたいのに。

何度告げても理解してもらえない。
お互いを守りたい気持ちはきっと同じなのに、何故伝わらないのでしょう…

どうか、この願いを聞き入れて下さい。
この体が蝕まれ、あなたを守る力が無くなってしまう前に。

お願いだから―――

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暗ッ!総司の独白で終わらせようって最初に決めてから書き始めたんですが、もうちょっと幸せ風に書くべきだったかな…
お互いの信頼を取るか、総司の身を案じる土方の思いを取るか悩み、シリアス中心シリーズなので後者を選びました。
やりすぎた様な気がしなくもないですが…。幸せな土沖はこれからいっぱい書いていきたいと思います◎(2005.11.5upload)